2014年3月24日月曜日

【STAP騒動の解説 260324】 北極の氷が増えたことを報道せず、海洋の酸性化の誤報が続く




北極の氷が増えたことを報道せず、海洋の酸性化の誤報が続く



かつてソ連のルイセンコが数1000人の科学者と徒党と組み、「共産主義のもとでは小麦が良く育つ」というウソの学説を打ち立て、多くの科学者がそれに従った。今から、わずか60年ほど前のことだ。彼らの主張は、


1)共産主義のもとで育てると(低温処理)小麦が多く生産できる、
2)メンデルの法則はブルジュア思想である、
というものだった。


ルイセンコの説に賛同しないか学者は処刑、シベリア送りになった(現在の日本が温暖化に疑問を呈すると、国の研究費が来ないのと同じ)。そして中国の毛沢東がルイセンコに学んで大量の餓死者をだし、北朝鮮も大失敗した。科学は事実に基づくものであり、学者の数がどうかとか、政策との一致とは無関係のものである。


それから60年、日本にルイセンコ旋風が吹き、まだNHKがそれを主導している。NHKのルイセンコ風世論操作で最近の二つを紹介する。


まず、ヨーロッパの宇宙機関と日本のJAXAがほぼ同時に「北極の氷が1.5倍になっている」ことを2014年(今年)1月に発表。これまで「面積」しか話あらなかった北極の氷が「体積」が測定されると、増えていることが分かった。


これまでの報道と全く違う結果なので、もしマスコミがSTPA細胞と同じ報道態度ととるなら、大々的にキャンペーンをして、「これまで北極の氷が増えたと報道したのは、誰が言ったのか」とリンチを加えなければならないだろう。国内の新聞でもこの事実を報じたところもあるが、報道は仲間内なので、女性研究員とは相手が違うということでリンチは行っていない。


またゴア副大統領は2008年に「2013年には北極の氷はすべてなくなる」と言い、それをNHKも報道したが、全く違う現実を報道しようとしない。


ウソを発表するが「積極的誤報」に対して、一方の学説や発見だけを報道する「消極的誤報」に分けると、今回の誤報ははっきりした「学説の選別」であり「論文の選別」だ。「論文には本当のことを書くべきだ。だからSTAP細胞論文は非難しなければならない」と書いた記者は、温暖化で正反対の学説があり、その一方だけを報道しているのは、「自分たちが理系論文の正誤を判断できる」と思っているのだろうか? それならSTAP細胞の正義も自分で判断できるはずだ。


もう一つ、読者からの情報によるとNHKが教育チャンネルで、CO2が海に溶けると海が酸性になるという番組を放映したという。言葉はわるいが「化学の基礎ぐらい勉強しろ!」と言いたくなる。


酸性、アルカリ性というのは、地球全体で変わりようがなく、地表にはカルシウム、ナトリウムなどのアルカリが豊富にあり、酸性やアルカリ性が変化するとそれに伴って、融けたり沈殿したりして海の酸性度を一定に保っている。


もともと海にCO2だけを溶かすということはできず、酸性度の変化によって海の周辺の陸地、海底などから物質が溶け出し、酸性度を中和する。


このぐらいの科学の初歩が分からないなら、NHKは科学放送を止めるか、NHK自体を解散するしかない。日本は今、ルイセンコ風の誤報に振り回されている。科学技術立国と言うなら、事実に忠実であること、科学として確立したことに反するときには特段の説明をつけること、という二つを大切にすることだろう。


「空気」の後を追う人ほどみじめな人はいない。


(平成26年3月24日)
武田邦彦

(出典:武田邦彦先生のブログ








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